■平成22年4月20日最高裁判決・・・(「制限利率」により弁済金の充当計算をした結果が「元本」の額 , 一度下がった「制限利率」は戻らない)(考察)+追記:貸金業規制 は6月18日から(閣議決定!)
‥‥……━★
こんにちは。
昨日の判例続き,対「プロミス」切り替えは・・・また後程とさせていただきます<(_ _)>
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さて,本題です。
久しぶりに最高裁から「不当利得」に関する判決が出ました。
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事件番号 | 平成21(受)955 |
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事件名 | 不当利得返還請求事件 |
裁判年月日 | 平成22年04月20日 |
法廷名 | 最高裁判所第三小法廷 |
裁判種別 | 判決 |
結果 | 破棄差戻し |
判例集等巻・号・頁 |
原審裁判所名 | 福岡高等裁判所 那覇支部 |
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原審事件番号 | 平成20(ネ)99 |
原審裁判年月日 | 平成21年02月10日 |
判示事項 | |
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裁判要旨 | 1 継続的な金銭消費貸借取引に関する基本契約に基づいて金銭の借入れと弁済が繰り返され,同契約に基づく債務の弁済がその借入金全体に対して行われる場合における利息制限法1条1項にいう「元本」の額 2 上記の場合において,上記取引の過程におけるある借入れの時点で従前の借入金残元本と新たな借入金との合計額が利息制限法1条1項所定の各区分における下限額を下回るに至ったときに,上記取引に適用される制限利率 |
参照法条 | |
全文 | 全文 |
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PDFより抜粋ご紹介→ http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20100420111708.pdf
『
2 原審が確定した事実関係等の概要は,次のとおりである。
(1) 基本契約に基づき継続的に借入れと弁済が繰り返される金銭消費貸借取引において,基本契約に定められた借入極度額は,当事者間で貸付金合計額の上限として合意された数値にすぎず,これをもって,利息制限法1条1項所定の「元本」の額と解する根拠はない。そして,上記の取引の過程で新たな借入れがされた場合,制限利率を決定する基準となる「元本」の額は,従前の借入金残元本と新たな借入金との合計額をいい,従前の借入金残元本の額は,約定利率ではなく制限利率により弁済金の充当計算をした結果得られた額と解するのが相当である。
(2) 本件取引においては,取引の開始から平成17年12月6日の借入れが行われる前までは,各借入れの時点における上記意味での元本の額は終始10万円以上100万円未満の金額で推移しており,その間の取引については,年1割8分の制限利率を適用すべきである。
(3) しかし,平成17年12月6日の借入れの時点では,上記意味での元本の額は10万円未満となるに至ったのであるから,同日以降の取引については,年2割の制限利率を適用するのが相当である。
4 しかしながら,原審の上記3の判断のうち,(1)及び(2)は是認することができるが,(3)は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
(1) 継続的な金銭消費貸借取引に関する基本契約に基づいて金銭の借入れと弁済が繰り返され,同契約に基づく債務の弁済がその借入金全体に対して行われる場合には,各借入れの時点における従前の借入金残元本と新たな借入金との合計額が利息制限法1条1項にいう「元本」の額に当たると解するのが相当であり,同契約における利息の約定は,その利息が上記の「元本」の額に応じて定まる同項所定の制限を超えるときは,その超過部分が無効となる。この場合,従前の借入金残元本の額は,有効に存在する利息の約定を前提に算定すべきことは明らかであって,弁済金のうち制限超過部分があるときは,これを上記基本契約に基づく借入金債務の元本に充当して計算することになる。
そして,上記取引の過程で,ある借入れがされたことによって従前の借入金残元本と新たな借入金との合計額が利息制限法1条1項所定の各区分における上限額を超えることになったとき,すなわち,上記の合計額が10万円未満から10万円以上に,あるいは100万円未満から100万円以上に増加したときは,上記取引に適用される制限利率が変更され,新たな制限を超える利息の約定が無効となるが,ある借入れの時点で上記の合計額が同項所定の各区分における下限額を下回るに至ったとしても,いったん無効となった利息の約定が有効になることはなく,上記取引に適用される制限利率が変更されることはない。
(2) これを本件についてみると,前記事実関係によれば,本件取引開始当初の借入金額は20万円であったというのであるから,この時点で本件取引に適用される制限利率は年1割8分となる。そして,各弁済金のうち制限超過部分を本件基本契約に基づく借入金債務の元本に充当して計算すると,その後,各借入れの時点における従前の借入金残元本と新たな借入金との合計額は100万円未満の金額で推移し,平成17年12月6日の借入れの時点に,上記の合計額が10万円未満となったというのであるが,これが10万円未満に減少したからといって,適用される制限利率が年2割に変更されることはない。
そうすると,同日以降の取引に年2割の制限利率を適用するのが相当であるとした原審の判断には,利息制限法1条1項の解釈適用の誤りがあり,この違法は判決に影響を及ぼすことが明らかである。論旨のうち,この趣旨をいう部分は理由がある。
5 以上によれば,原判決のうち上告人の敗訴部分は破棄を免れず,上記の見地に立って過払金額を確定させるため,同部分につき,本件を原審に差し戻すこととする。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 那須弘平 裁判官 藤田宙靖 裁判官 堀籠幸男 裁判官 田原睦夫 裁判官 近藤崇晴)
』
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☆今日の一言☆
「制限利率」は従来通りの判決例の多くに採用されていますので,当然の結果かと思います。
ただ,『基本契約に定められた借入極度額は,当事者間で貸付金合計額の上限として合意された数値にすぎず,これをもって,利息制限法1条1項所定の「元本」の額と解する根拠はない。・・・』
に関しては,「包括的契約金額」説で闘っている方には・・・残念な結果となりました。。。
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(考察:4月21日)
少し引っかかっていて,Q&A本も読み直してみての考察ですが・・・
今回の最高裁判決では,
『基本契約に定められた借入極度額は,当事者間で貸付金合計額の上限として合意された数値にすぎず・・・』
となっており,例えば「担保」や「手形等」で100万円超えの「借入極度額」が決められている場合には今回の最高裁判決の例外になるかと思いますが・・・。
(考察ここまで)
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また,他記事がありましたら追記させていただきます<(_ _)>
(取り急ぎ失礼します)
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追記:
今回の解説が分かり易く書かれていましたのでご参考まで。
■久しぶりの過払い最高裁判例
(「samurai office imayoshi」様ブログ 4月20付より )http://officeimayoshi.blog3.fc2.com/blog-entry-20.html
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それから「貸金業者」にとっても「消費者」にとっても・・・いよいよですね。
■貸金業規制 6月18日から実施へ
(「NHKニュース」様 4月20日付より)http://www3.nhk.or.jp/news/html/20100420/k10013954691000.html
『
政府は、消費者金融など貸金業者に対し、借り手の年収の3分の1を超える貸し出しを原則として禁止するなどの規制を、ことしの6月18日から実施することを20日の閣議で決定しました。
・・・
』
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やっと,ママさん宇宙飛行士が無事に帰還されました。お帰りなさい!
■山崎さんのシャトル 地球に帰還
(「NHKニュース」様 4月20日付より)http://www3.nhk.or.jp/news/html/20100420/t10013972151000.html
(今夜はこれで失礼します)
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コメント
こんにちは
久々の最高裁ですね。私の例の件は結局、地裁棄却→高裁棄却でした。いい報告出来ずごめんなさい。仮に認容判決にて被告から控訴上告であれば、原審が覆ることも滅多にあることではないのでいいのですが、棄却事案を上告しても棄却される可能性が非常に高く、裁判官によっては道がある争点を私が塞ぐことになりかねませんので深追いは断念しました。よってこの件は墓場までもっていきます(笑)
とはいえ、それで尻尾丸める私じゃありませんから、当時和解した弁護士に対する損害賠償を画策しています。
訴訟は印紙と切手代だけですから宝くじよりマシと割り切ってます。
当時既に過払いだったものを支払い有りとの和解した弁護士、そんな事案は全国ゴロゴロしているかも知れませんよね?
かなり言葉濁していますから分かり辛いかもしれませんが、まだまだ私の戦いは続くということだけ理解して頂ければと思います。
最後に、このブログには非常に助かっています。貴重な情報発信され続けられますようお体に気を付けいつまでも頑張って下さい。
投稿: nanaiti | 2010.04.21 09:09
nanaiti 様
こんにちは(^^)
お久しぶりです。最高裁判決は例年になく遅く,今年初になりました(^^;)
>裁判官によっては道がある争点を私が塞ぐことになりかねませんので深追いは断念しました。
そろそろと思ってはいたのですが・・・勇気ある決断に敬意を表します。
やるだけやったのですから・・・やらないで悔やむよりは余程いいと思います。
>とはいえ、それで尻尾丸める私じゃありませんから、当時和解した弁護士に対する損害賠償を画策しています。・・・
そうですか・・・引き続き応援させていただきます(^^ゞ
ちなみに弁護士・司法書士報酬についてもちょっと疑問に思う今日この頃です。
和解にもいろいろありそうです。。。
弁護士等との報酬契約も,金銭消費貸借になるのでは・・・とおかしな事を思っています(^^;)
ようは「利息制限法」が適用されないかな?と考察してみようかと・・・戯言ですが。。。
それから,和解契約書と金銭消費貸借書についても現在再考しています。。。
過払い金の和解契約書=業者側が借りている。
過払い金債権者が,貸しているという構造です(ただし,貸し付け業務をしている業者)
過払い金を和解しているのにも払わないし,営業(貸し付け)も続けているのは・・・故意に支払わない過払い金を「消費」しているという解釈です。。。
最近は,特に開き直りの貸金業者が大手にも増えて来ていますね。。。
>最後に、このブログには非常に助かっています。貴重な情報発信され続けられますようお体に気を付けいつまでも頑張って下さい。
こちらこそ恐縮です<(_ _)>
私も一度何処かで区切りを付けたいと思う今日この頃ですが・・・できる所まで頑張りたいと思います(さすがに歳を感じます(^^;)
nanaiti 様もくれぐれもお体を大切に!
これからも沢山の方を導いて下さいね。
先ずはお礼まで<(_ _)>
投稿: yuuki | 2010.04.21 12:47